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聖歌は生歌

聖歌は生歌

年間第17主日

《A年》
 125 主よあなたは永遠のことば
【解説】
 詩編119は、ご存知のように、176節からなる、全詩編の中でも、最も長いものです。また、8節をひとまとまりにし
た、アルファベット詩編(各節の冒頭が、ヘブライ語のアルファベットで始まる)としても有名です。イスラエルが神から
与えられた「律法=トーラー」が、「教え」「仰せ」「定め」「さとし」「さばき」「おきて」「すすめ」「ことば」という、八つの同
義語で語られています。律法について、キリストは、「わたしが来たのは律法や預言者を廃止するためだと思っては
ならない。廃止するためではなく、完成するためである」(マタイ5:17)と、言われています。これは、「律法や預言
者」すなわち、旧約聖書全体を完成するため、また、神が望まれた本来あるべき解釈をするため、ということができま
す。キリストの到来は、旧約聖書を無効にするものではなく、旧約の預言を完成するためだったのです。
 この詩編119は他に、56 神のみ旨を行うことは、75 神よあなたのことばは でも歌われますが、176節
すべてが唱えられるわけではありません。ぜひ、一度、通して読んで見てください。
答唱句は、非常に複雑な和音で進んでゆきます。冒頭は、2♭の長音階、B-Dur(変ロ長調)の主和音で始まりま
すが、これは、最初のアルシスだけです。最後は、バスからC(ド)-G(ソ)-Es(ミ♭)-C(ド)の和音で終わること
から、教会旋法の第一旋法に近いと言えるでしょう。前半はバスが音階進行で動き、とりわけ「永遠の」では、バスと
アルトで臨時記号が使われた半音階の進行で、こころを「永遠」に向けさせます。後半では、バスが第三小節でG
(ソ)、第四小節でC(ド)を持続し、旋律は、最高音のC(ド)となり、この信仰告白の体言止のことばを力強く終わら
せます。
 詩編唱は、ドミナント(属音)のGを中心にして動きます。
【祈りの注意】
 なお、二節の第一小節と第二小節にまたがることばは、「教会の祈り」(第三水曜日「昼の祈り」)では、「とこしえに
わたしの宝、」で改行されていますので、小節の区切りも合わせるか検討の余地はありそうです。
 答唱句のことばは、《ガリラヤの危機》の後のペトロの信仰告白のことば(ヨハネ6:68)です。最初の「主よ」の後
の八分休符は、次の「あ」のアルシスを生かすものです。「よ」が惰性で伸びないようにし、オルガンの伴奏が一足早
く変わるのを味わえると、「あ」のアルシスがより生きると思います。ペトロの信仰告白のことば「あなたは永遠のいの
ちのことばを持っておられます」の次には、「あなたこそ神の聖者であると、わたしたちは信じ、また知っています」と
あります。この、答唱句のことばも、ただ単に「ラビの一人として」「ユダヤの賢者として」ということではなく、神の聖者
としてあなたこそ永遠のいのちのことばをもっておられる、という意味合いになるのではないでしょか。「あなたは~」
のところを、メトロノームで、はかったように歌うと、ことばを棒読みしているように聞こえます。四声の場合は、アルト
は特にレガートをこころがけましょう。一連の八分音符を、やや早めの気持ちで歌うと、「あなたこそ」という確信に迫
る祈りになるのではないでしょうか。「ことば」の部分、特に、アルトの動きは、最後の rit. を促すものです。オルガン
伴奏だけのときも、この音の動きをよく味わい、オルガン奉仕者は、祈りを込めて弾きたいものです。この答唱句を歌
うとき、ペトロと同じように、キリストに従う決意を新たにしたいものです。
 第一朗読では、ソロモンが、長寿や富ではなく、民を正しく裁くための善と悪を判断する力を神に求めた箇所が読ま
れ、福音朗読では、天の国は、隠された宝、高価な真珠を見つけたようである、とのたとえが語られます。いずれも、
言い換えれば、わたしたちを生かす、「神の口から出る、すべてのことば」(申命記8:3参照)である、『聖書』全体を
指しているとも考えられます。今日の答唱詩編として歌われる箇所も、特に、金や銀といったこの世の宝より、神のこ
とばこそ「わたしの宝」と述べられます。『聖書』という、神のことばの宝箱を、いつも大切にこころに刻めるように、この
詩編を伝えてください。第三小節では、音も詩編唱の最高音ですが、今日、歌われるすべての節に「すばらしい」とい
うことばがあります。無理にがんばることはやりすぎですが、自然と、「神のことばはすばらしい」という信仰告白が伝
わると、すばらしい祈りとなるのではないでしょうか。
【オルガン】
 答唱句のストップは、答唱詩編の基本である、フルート系の8’+4’でよいでしょう。アルトが音階進行や半音でか
なり動くので、手鍵盤だけで弾く場合は、持ち替えたり、黒鍵から白鍵へ指を滑らせたり、といった技法を使えるよう
にしたいものです。ともすれば、アルトにつられて、他の声部も切れてしまうので、祈りの基本である、レガートを心が
けることに注意を向けましょう。また、祈りの注意でも述べましたが、オルガンの前奏がメトロノームで、はかったよう
だと、会衆も同じようになってしまいます。短い答唱句ですが、オルガン奉仕者は、オルガンで弾く音以上に、祈りを
深めなければならないと思います。

《B年》
 18 いのちあるすべてのものに
【解説】
 この答唱句は、詩編から直接取られたものではありませんが、詩編145全体の要約と言うことができます。この、
詩編145は、詩編に7つあるアルファベットの詩編(他に、9,25、34、37、111、112、119 詩編の各節あるい
は数節ごとの冒頭が、ヘブライ語のアルファベットの順番になっている)の最後のものです。表題には「ダビデの賛美
(歌)」とありますが、この「賛美」を複数形にしたのもが「詩編」(ヘブライ語でテヒリーム)となりますから、詩編はとり
もなおさず「賛美の歌集」と言うことができますから、詩編は歌うことで本来の祈りとなるのです。。
 旋律は、ミサの式次第の旋法の5つの音+司祭の音からできています。先週歌われた、123「主はわれらの牧
者」(前の年間主日の答唱詩編)がミサの式次第の旋法の5つの音だけだったのに対し、ここでは司祭の音であるB
(シ♭)が加わりますが、ミサとの結びつきと言う点での基本的なところは変わりません。それは、この二つの答唱詩
編で詩編唱の音が全く同じであることからも分かると思います。
 冒頭の「いのちある」では旋律で、最低音のD(レ)が用いられ、バスは、最終小節以外は順次進行が用いられるこ
とで、すべての被造物に生きるための糧=恵みが与えられる(申命記8:3参照)ことが表されています。終止部分で
は、バスで最低音が用いられて、それが顕著になると同時に、ことばも深められます。一方、「主は」に最高音C(ド)
を用いることで、この恵みを与えられる主である神を意識させています。この「主」の前の八分音符は、この「主」のア
ルシスを生かすと同時に、「すべてのものに」の助詞をも生かすもので、この間の、旋律の動きはもちろん、精神も持
続していますから、緊張感を持った八分音符ということができます。なお、「ものに」は、「の」にそっとつけるように歌
い、「にー」と延ばすことがないようにしましょう。
 詩編唱は、4小節目で、最低音になり、低音で歌うことで、会衆の意識を集中する効果も持っています。
【祈りの注意】
 答唱句は、旋律の動きはもちろん、歌われることばからも、雄大に歌うようにします。いろいろなところで、聞いたり
指導したりして感じるのは、

答唱句が早すぎる
のっぺらぼうのように歌う

の二点です。指定された速度、四分音符=60は、最初の速度と考えてみましょう。二番目ののっぺらぼうのように
歌うことのないようにするには、「すべてのものに」を冒頭より、やや早めに歌うようにします。また「いのちある」を付
点四分音符で延ばす間、その強さの中で cresc. ことも、ことばを生かし、祈りを深める助けとなります。
 後半は、「主は」で、元のテンポに戻りますが、だんだんと、分からないように rit. して、答唱句をおさめます。な
お、最後の答唱句は「食物を」の後で、ブレス(息継ぎ)をして、さらに、ゆったり、ていねいにおさめるようにします。こ
の場合「食物」くらいから、rit. を始めることと、答唱句全体のテンポを、少しゆっくり目にすることで、全体の祈りを深
めることができるでしょう。
 福音朗読は、今週からヨハネの福音が朗読されます。五つのパンと二匹の魚を群集に分け与えられた今日の朗読
箇所は、ミサの原型、とも言われています。詩編唱は、第一朗読のエリシャを通して行われた神の不思議なわざと、
キリストを通して行われた、奇跡を結ぶものです。今日歌われる詩編唱は、ミサに参加するわたしたちすべての感謝
の祈りです。詩編唱の7節にあたる詩編の15+16と10節は、古くから教会の公式の食前の祈りとして、用いられ
てきました。「食前の祈り」もいろいろな祈り(やり方)がありますが、この答唱句と詩編唱の7節を歌うことも、教会の
伝統の祈りに結びつくものと言えるでしょう。
【オルガン】
 答唱句は、「主はわれらの牧者」と同様に、フルート系のストップ、8’+4’が良いでしょう。祈りの注意でも指摘し
たように、答唱句が早くならないように、また、のっぺらぼうのようにならないようにするためには、オルガンの前奏
が、重要になります。ここで、指摘したことは、すべて、ことばを生かし、祈りを深めるためのものであることを、忘れな
いようにしていただきたいと思います。会衆が答唱句を歌って、祈っているときにも、漠然と弾くのではなく、祈りが深
まるためには、どのようにして、オルガンで支えるのがふさわしいかを、問い続けてゆきたいものです。

《C年》
134 主をたたえよう
【解説】
 詩編138は悩みの中から救われた個人的感謝の詩編ですが、神殿祭儀でそれを歌っただけではなく、主に感謝
することを全世界の王に期待します。
 さて、この「主をたたえよう」はすべての答唱句の中で、最も多くの詩編唱が歌われます。答唱句は、詩編136:1
〔131〕から取られています。この詩編は、グレゴリオ聖歌では復活徹夜祭に歌われます。八分の十二拍子の答唱
句の冒頭は、トランペットの響きで始まります。なお、『典礼聖歌』合本では、最初、テノールとバスは、H(シ)です
が、『混声合唱のための 典礼聖歌』(カワイ出版 2000)では、四声すべてFis(ファ♯)-Dis(レ♯)-Fis(ファ♯)-
H(シ)-Dis(レ♯)となっています。この、ユニゾンのほうが、力強い響きに聞こえると思います。
 「主をたたえよう」では、バスがGis(ソ♯)からFis(ファ♯)へ下降することで、ことばを延ばす間に、和音も二の和音
から四の和音へと移り、さらに「主はいつくしみ」までE(ミ)からDis(レ♯)へと深まります。その後は、旋律も和音も
落ち着いており、神のいつくしみの深さと限りないあわれみを穏やかなこころでたたえながら、答唱句は終わります。
 詩編唱は、冒頭、最高音のH(シ)から、力強く始まります。主に、一つの詩編唱の中で、一番重要なことばが多い
第三小節は、最も低いDis(レ♯)を用いることで、重厚さと、低い音への聴覚の集中を促しています。詩編唱の最後
は、主音Fis(ファ♯)で終わり、そのまま、答唱句へとつながります。
【祈りの注意】
 答唱句の旋律は、主音:Fis(ファ♯)⇒旋律の最低音:Dis(レ♯)⇒主音:Fis(ファ♯)⇒旋律の最高音:H(シ)と動
きますから、この旋律の上昇の力強さを、全世界への呼びかけの強さへと結びつけましょう。八分の十二拍子のこの
曲は、八分の六拍子の曲と同様に、八分音符ではなく、付点四分音符を一拍として数えましょう。「主をたたえよう」
の「た」を、心持早めに歌い、続く八分音符への弾みとすることで、全体のテンポが引き締まります。
 「たたえようー」と延ばす間、さらに cresc. を強めることで、呼びかけが、すべての国に広がるでしょう。このとき、
バスがGis(ソ♯)からFis(ファ♯)へ下降することで、和音が変わりますから、他の声部はしっかり呼びかけを続け
(音を延ばし)、バスは地球の裏側にまで、この呼びかけを深めるようにしましょう。その後、八分休符がありますが、
この休符は、次の「主」のアルシスを生かすためのものですから、きちんと、入れてください。
 この、「主」がアルシスで、よく歌われると、このことばがよく生かされるばかりではなく、続く、滑らかな旋律の信仰
告白が、ふさわしい表現となります。最後の「深く」の四分音符が、必要以上に延ばされるのをよく耳にしますが、そ
れでは、答唱句の重要な信仰告白のことばが、途中で途切れてしまい、答唱句全体のしまりもなくなります。ここ
で、やや、 rit. するからかもしれませんが、この rit. は、ことばを生かすためのものですから、「その」に入ったら、す
ぐにテンポを戻しましょう。あくまでも、「ふかくーその」は、八分音符三拍分の中であることを忘れないようにしてくだ
さい。最後は「そのあわれみは」くらいから徐々に rit. して、答唱句を締めくくります。「えいえん」で、八分音符を五
拍延ばす間、まず、dim. (だんだん弱く=いわゆるフェイドアウト)しますが、きちんと五拍分延ばしてください。その
間、作曲者も書いていますが「神様のことを」、神のいつくしみの深さもあわれみも永遠であることを、こころに刻み付
けましょう。最後の「ん」は、「さーぃ」と同じように、「え」の終わりにそっと添えるように歌います。
 第一朗読では、その罪のゆえに滅ぼされようとしていたゴモラの町を、そこにいるわずかな正しい人も一緒に滅ぼ
してしまわないようにとのアブラハムの願いを神が聞き入れられた箇所が朗読されます。詩編は、その、神のいつく
しみに感謝して歌われます。天地創造以来の歴史を振り返れば、おそらく、人類は何万回も滅んでいることでしょう。
しかし、神は、ご自分の似姿として造られた人類の滅びを望まれず、かえって、すべての人の救いのためにご自分の
ひとり子を遣わしてくださいました。いつの時代においても、神の前に正しい人の祈りが聞き入れられたのです。加え
て、わたしたちの願いに対して、神はよいものばかりでなく、ご自身の息吹である「聖霊を与えてくださる」(ルカ11:
13)のです。このような神のいつくしみに応えながら、この詩編で神に感謝をささげたいものです。
【オルガン】
 前奏のテンポのとり方、模範が、会衆の答唱句の祈りを左右します。上記の祈りの注意を、前奏でしっかりと守っ
てください。言い換えれば、オルガン奉仕者の答唱句に対する、情熱が、前奏、伴奏を決め、それが、共同体全体の
答唱句のあり方を決めるのです。オルガン奉仕者が、ただ、オルガンを弾いていればよいというものではないことが
分かると思います。答唱句の性格と、詩編唱の内容から考えると、強すぎない程度の2’を加えてもよいでしょうし、
伴奏が力強いものになるような、設定を考えたいものです。もちろん、答唱詩編という黙想の性格も忘れないようにし
ましょう。人数によっては、少し強い4’にしておくとよいかもしれません。詩編唱も、力強く歌われますので、声量が
豊かな人の場合には、フルート系の4’を入れて、Swell を閉める方法も考えられます。詩編先唱者の声量とのバラン
スを考えましょう。





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